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のしの知識
のしは、”最高の贈答品”を表すシンボルマークだよ。
日本は古くから人に贈り物をするとき、必ず伝統的な作法でお金や品物を包む習慣があります。
のしと水引は大切な贈り物だということを相手にわかりやすく示すための象徴なのだそうです。
昔はあわびが最高級の贈答品だったんだって。
あわびを薄く切って伸ばして干したものを”のしあわび”といって、
”伸ばす”という行為から、
伸びる=永続の象徴であり、贈り先の発展を祈るという祝意が込められているそうです。
中央の上下にスッと直線に伸びた黄色いものが”のしあわび”
また、あわびは”生臭物を忌み嫌う”弔事では使わない。
お中元などのお肉やお魚を贈る時も本来なら使わない。
不祝儀と区別するために”のし”を使う。
弔事で”のし”は使わないって覚えておくと役立つよ。
水引の知識
贈る品物を包んだ和紙が開かないように結ぶためのものだよ。
昔、中国から届く貴重な品々が紅白のひもでしばってあったのを真似て、大切な贈り物には水引をかけることが定着したそうです。
白色には、清浄・神聖・穢れのないものを贈る、という意味があり、”不浄なものではありません”という証。
水引をかけることで、心を込めて結ぶことを表現しているとのこと。
贈る側の誠意と相手への気配りのカタチが水引なんだね。
ちなみに
贈り物を白い紙で包むという日本古来からの習慣は、汚れや折り目が目立ちやすい白い紙をわざと使うことで
”あなたのためだけに用意しました”という気持ちを表現するため。
のし紙や祝儀袋は白が正式。
水引の使い分け
”繰り返さない方が良いこと”。婚礼、弔事、全快祝いには結び切り。
一度結ぶと二度とほどけない!
- 婚礼=離れない
- 弔事・全快祝い=くり返さないほうが良い
”何度あっても良いお祝い”は蝶結びだよ。
ほどいてもまた結びなおせる!
- 出産
- 長寿のお祝い
- 新築祝い
- 開業・開店
- その他一般的なお祝いに
水引の本数は慶事では奇数、弔事では偶数なんだ。
一般的なお祝いは5本で、結婚は2倍の10本”夫婦水引”。
偶数だけど、”二重陽結び”といって豪華にするよ。
数とタブーを知って気配り名人を読むとマナーが学べるよ
のしあわびの由来
鮑を伸ばすのでしょうか…
遥か昔、神さまが国を治めていた時代にさかのぼるよ。『日本書紀』に記載があるんだ。
天照大御神(アマテラスオオミカミ)を祀るのに相応しい土地を選ぶために、
倭姫命(ヤマトヒメノミコト)は日本中を旅していました。
天照大御神さまの御鎮座は伊勢に決〜めた。
無事、御鎮座を終えたヤマトヒメノミコトは志摩の国崎の海をぶ〜らぶら。
そこでお弁という海女さんに出会う。
その貝は何という貝ですか?
あわびと申します。大層おいしゅうございます。おひとつどうぞ。
激ウマ。うますぎて感動。
天照大御神さまにも差し上げたいなあ。
毎年伊勢神宮に献納していただけますか?
承知しました。
でも生だと腐ってしまうので、薄く切って乾燥させましょう。
天照大御神に献納するために、あわびを薄くそいで乾燥させたということらしいです。
ちなみにあわびは竹筒を使って手で伸ばすんだって。
手伸ばし→延長(のなが)→延命→長生不死と言葉が導かれ、
伸したあわびは長寿をもたらす縁起の良い象徴に。
健康、長寿、益々のお家安泰と繁栄を祈る気持ちを表現したものがのしなんだね。
あわびは特別な霊力を備え持つ⁉
昔の日本人は、海を”神秘な領域”と捉えていたんだ。
昔の人は海の彼方を「常世」とよんでいました。
神が住む異界、不老不死の地を意味します。
海は魚・貝・海藻といった恵みを与えてくれるものの、嵐と波はすべてを飲み込むという側面も持ち合わせていることから”特別な領域”として畏敬の念を抱いていたそうなのです。
あわびは真珠も出来るんだよ。
真珠は白玉真玉と称えられる宝珠です。
「常世」から潮にのってやってくる神の霊力を抱いた聖なる恵みと考えられていました。
そんな真珠も育つあわびは、”特別な霊力を備え持つ貝”として珍重されたのです。
『あなた様の末永い繁栄と健康を祈って、その霊力を持ったあわびを添えてお贈りします』という想いを表現してるんだって。
のしあわびは最高の礼をつくした贈答品
- 鯛や鯉の魚類
- キジや鶴などの鳥類
- 酒と伸したあわび(のしあわび)
これらを奉書紙の包んで贈ることが、
最も礼をつくした贈答の作法なのだそうです。
酒と伸したあわびはセットという考え方なんだ。
このお作法も時代とともに変化していくよ。
贈り物は酒(のしあわびセット)と一緒に贈る
↓
のしあわびさえ贈れば酒を添えたと同じこと
↓
酒は省いてのしあわびは必ず添えよう
↓
のしさえあればオッケーヽ(^o^)丿
簡略化されたとはいえ、のしを使うということは相手への敬意を払うということなんだね。
水引に宿る魂
飛鳥時代。遣隋使の小野妹子らが持ち帰った、中国からの献上品に結ばれていた麻ひもが起源なんだって。
白と赤に染められた麻ひもが、献上品に結ばれていたそうです。
- 長い航海の平穏無事をお祈りするお守りか?
- 日本の天皇に敬意を払う品であるという目印か?
麻ひもの意味は分からんが、大変美しいのう。
贈答品は穢れが付かないように先方に納める、
ということは日本人にとってすごく大事。
一度結ぶと、解くときに結び跡が残るので封緘の役目も担う水引。
受け取る方も安心じゃ。
その後、日本の宮廷で扱われる献上品には白と赤の麻ひもを結ぶ。
という習慣が生まれ、貴族社会の進物の作法として定着したそうです。
時代とともに麻ではなく紙ひもに素材が変っていきました。
水引は長いままではただの紙ひも。結ぶことによってその役割が果たせるんだ。
『結ぶ』にも意味がある
我々は結びは祈り、約束、占有、呪術といった特別な意味を含めて歌を詠むときありますぞ。
- 「吉」を「糸」でしっかりつなぐ
- 袋に「吉」を入れて口を「糸」で結ぶことによって、中に閉じ込められた「吉」という字の霊力が守られる
- 個別の二つのものを絡み合わせて結びつなげることによって、中に「吉」を閉じ込める
- 質の違う二つのものがつながることで、今までとは違う新しい形が誕生する
新しい形には新たな霊力が宿る、と考えられ「むすび」は「産霊」とも書かれる。
例えば
一組の男女が契りを結びます。
「陽」の男性と「陰」の女性が和合することによって、新しい生命の誕生をむかえた。
男の子ならば「むすびひこ」、女の子なら「むすびひめ」。
詰まった言葉が「息子」と「娘」。
幸いの長き事を願う。
といった想いを込めて水引を結ぶのじゃよ。
結ぶ行為には魂が宿るんだな。
白い紙は神の紙
日本の禊(みそぎ)という文化と深い繋がりがあるよ。
禊とは
神事や祈願などを行おうとする時、河や海の水に入って自信の身に付いた穢れを洗い清める行い。
身体を清める事によって心も清まり真摯に祈願成就を願うことが出来る、というもの。
身近なことでは、お寺や神社の手水舎で柄杓に水をくんで手や口を清める行為が禊だよ。
白い和紙と禊の関係
白い和紙が出来上がるまでに、大量の水に何度も晒すんだ。
水に晒すことによって出来る白い紙は、
悪いものを水によって流し去る禊の行為と同義と考えられ、穢れが洗い流された品とされています。
穢れなき純白で清浄な紙は、神奉りに最も適しているまさに”神の紙”なのです。
包装紙は結界
何か品物を贈る時の包装紙は自分と相手との結界なんだ。
これは日本人の贈答文化への思い入れが根底にあるんだよ。
相手の領域、自分の領域、神の領域、それぞれを尊重し侵略しないための境界線とする目印が『結界』。
襖や障子もそれにあたる。
この『結界』は日本の贈答文化に大いに関わっています。
穢れや不浄が付いた品物は相手に贈れません。
包装された品は大切に扱われていた証であり、品物を清浄に保ち、自身や外の穢れが相手に移らないようにとの配慮なのだそうです。
祝儀として金銭をお渡しする時も同様。
のし包みに包むという行為は、包み紙が外と中の紙一重からなる『結界』を表しているということなのだそうです。
相手を思いやる行為が含まれているのが贈答なんだね。
参考文献
- 齋藤和胡、なぜ日本人は「のし袋」を使うのか?、淡交社2016年
- 岩下宣子、知識ゼロからの喜ばれる贈り物のマナー、幻冬舎2012年